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「あっ、あっ……」  暫くして解放された唇からは、艶を帯びた喘ぎが上がる。そんな自分に驚きながら、咲夜が呼吸を整えていると、今度は脚を高く持ち上げられ、後孔へと彼の切っ先が添えられた。 「う……くぅっ」  何度もそこを使われているが、こんなにゆっくり犯されるのは初めてで……咲夜は思わず歯を食いしばり、シーツをキュッと握りしめる。と、それに気付いた恭が一旦動きを止め、咲夜の背中を抱き上げるようにその体を引き起こした。 「恭……やっ、あぅっ!」  すると自然と対面座位の格好となり、自重で咲夜のアナルは徐々に彼の昂りを飲み込んでいく。 「うっ……んぅ!」  いつもと違った角度と深さに、軽く目眩を覚えた咲夜は、快楽の波に飲まれながらも、助けを求めて恭の背中へと縋りついた。 「あっ、はぁ……ん」 「気持ちいいのか?」 「……きもち…いい。恭…ごめ……」  挿入だけで達してしまった事に気付いて咲夜は詫びるが、恭は喉奥で低く笑うと、背中を優しく撫でさすりながら「今日はいい」と告げてくる。 「まって…このまま……もうちょっと…だけ」  こんな事は二度と無いかも知れないから、もう少しだけこうして恭と抱き合っていたいと咲夜は思った。  恭が何故、自分をここに閉じ込めたのかとか、この先自分はどうなるのかとか、そんな事はもうどうでもいいから、側に居たいと咲夜は願う。 (恭になら、何をされても……)  優しくされたくないと言ったら嘘になる。それでも――彼のいない世界より、今の方がずっと幸せと感じてしまう自分がいた。 「恭が……きなんだ」  ポロリと漏らした本音が声に出ていた事にも気付けない程、咲夜の体とその精神は疲れ果てていたけれど、刹那、急に激しくなった突き上げと、自分を呼ぶ切なげな声音に、もしかしたら、自分は恭に愛されているんじゃないのかと……そんな、都合の良い夢を見ながら咲夜は意識を手放した。

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