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陸上部4

俺はまた夜の公園に向かった。 中学の時に着てたジャージを羽織って公園内の奥のベンチに駆け寄る。 スラリとした背の真悠はベンチの前で待っていた。 遠くの何かを見ていたが、近づいてきた俺に気がついてニコリと微笑んだ。 「充希こんばんは」 「あ、こんばんは…」 挨拶をきちんと返す彼は、この前と変わらず有名メーカーのスポーツウェアを着こなしていた。よく似合っている。 「じゃあ、今から走りにいく?」 「え、あ、うん、行こう」 サッと軽やかに足を踏み出した真悠に続いて充希も付いていく。公園からスタートした真悠とのランニングはやはり楽しかった。 ペースをお互い見つつ軽い力で足を動かしていく。走りながら会話をしていくうちに真悠について分かったことがある。クラスが隣であったこと、陸上は高校になってから初めて始めたこと、またあるものに夢中になるとそれをずっと追い続けてしまうこと。最後の一つは、俺も同じだと思った。俺も一つのことしか手につけられない性格だから、そればっかりになってしまう、と。 そう言うと、真悠は「俺たちってちょっと似てるね」と笑った。 そうやって少しずつ彼のことをより知っていくうちに公園へ戻ってきた。 今日のランニングコースは終了だ。時間も9時を示しており、好青年の彼と別れを告げる。 「それじゃあ、また」 向かい合って真悠にそう言うと、彼はまた手を握ってきた。 両手で柔らかく包み込んで、「楽しかった、また走ろう」と微笑まれる。 初めは驚いていた手を包まれる感覚も、今日は安心感を感じ得た。 だから、今度は自分の意思で「いいよ」と彼に伝えた。

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