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体育祭15

午後の部も陸上部のメンバーから接触はなかった。充希がわざと隅の方で離れているからかもしれないが、自分たちは盛り上がって充希に興味を示している暇はなさそうだった。 そんなことをしているうちに、充希の競技の番が回ってきた。充希はクラスメイト達から人気がなくて余っていた借り物競争に出る。 借り物競争に出ることに異論はなかったが、人から物を借りてこなければいけないというのが充希にとってはネックだった。友達が少ない分、頼れる人が減ってくる。充希は「変なのが当たりませんように」と待機列に並んだ。 制限時間を与えられて生徒たちは必死にものを探しに右往左往する。与えられたお題の紙とその借りたものをゴール場所で係に提示し認められるとゴールになる。そのゴールした順位を競っていくのだが、人によっては見つけることが出来なくてゴールできずに終わってしまう人もいる。充希の2つ前に出てた生徒もゴールできずに制限時間が来てしまった。充希はドキドキしながらスタートラインへ立った。お題の入った封筒を置いたテーブルが何十メートルか先にある。スタートすると早い者勝ちでその封筒をとりお題を確認する。この最初がとても重要かつ運であった。スタート準備の合図が出る。充希はかまえると、合図と同時に飛び出した。 テーブルへは二番手についた。選ぶ余裕もなくてまっすぐ走ってきた目の前にある封筒を取り中身を開けた。 お題は「2人だけのおそろいのもの」だった。 お揃いのものならハチマキでも靴でも何でもあった。しかし2人だけと限定されると話は違う。ここにきて充希は運が悪いなと思った。友達が少ない充希には不利である。充希がお題内容を見て呆然としていると、ほかの生徒たちはお題を手に取り走り出してしまった。充希も慌ててとりあえずグラウンドを走る。どうしていいかわからない充希はとりあえず味方である紅組のテントへと走る。 とりあえず紅組のテントへ走ると、中で応援していた生徒たちは充希を見て「なんだなんだ」と群がってくる。ちなみにお題の内容は直接言ってはダメというルールがある。充希はお題について上手い説明が見つからない。それに余計動揺しておろおろしていると、偶然応援のために最前列にいた遼が声をかけてきた。 「ミツキどうした!」 「遼っ」 遼の顔を見た瞬間、あの時のことを思い出した。 「遼来て!」 充希はそう叫ぶと遼の手を引っ張り走り出した。自陣のテントでは「遼が連れていかれたぞ!」「何のお題?」と騒ぎだす。遼は何がなんだかわからないと叫びながらそのまま連れて行かれた。 遼も充希もなんだかんだほかの生徒に比べ足が速いため、一番にゴール地点につく。充希は急いで係にお題を渡した。遼は何のお題だと充希に聞いている。 係の人が「2人だけのおそろいのもの」とお題を読み上げた。充希は急いでこれですとミサンガを指した。充希と遼の二人の右足首には赤と青のミサンガ結ばれている。係の人はじっとそれを見つめると、良いと判断してゴールしたという証である旗を掲げた。 そのゴールは明確に1位であった。 紅組のテントはそれを確認して大盛り上がりである。充希はその声をきいてやっとホッとした。一方遼は「展開はやすぎてわかんない」と困惑しながら笑っている。 ゴールした人たちが並ぶ列へ進む。借りてきたものはすぐには返せないし、違反がないか係によるチェックがあるため競技終了まで持っていなければならない。充希の借りたものは遼についているミサンガであるため、遼ごと待機列に並ぶことになった。 「ミツキ、お前だけだぞ人つれてきたの」 「だ、だって焦っちゃって…」 「まあ、そういうミツキのがむしゃらに勝ちを目指すとこ好きだからいいけどさ」 遼はそれでもおかしすぎとケラケラ笑っている。充希は笑われていることに耳を赤くしながら、その時思いついたのがこれしかなかったのだと呟いた。連れてきたほうが早い、そう直感的に思ってしまったのだ。 「この色の組み合わせ2本しかなかったからよかったな。ミサンガつけてるやつうちのクラスにそこら中いただろ」 「あっ。確かに…危なかった」 「ほんとだわー」 そういって髪をぐしゃぐしゃにかき混ぜられる。遼は思う存分充希の髪で遊び、競技は無事終了したため撤収となった。もちろん、再チェックも二本しかない色ということでパスした。 テントへ戻るとクラスメイト達が遼と充希のもとへ寄ってきた。先ほどの出来事に皆驚き、笑ったと話している。久しぶりの囲まれて談笑する感覚に充希はドキドキとしていると、最終競技の団体リレーの集合呼び出しがきた。遼も陸上部であるためうちの団体リレーメンバーだ。 「あ、そろそろいってくるわ。ミツキ1位おめでとっ」 遼はそう笑って充希の頭に軽く手を乗せて撫でると、準備へ向かった。 そこにいたクラスメイト達にも「1位おめでとう」と祝福の言葉をかけてもらう。何気ない一言だがあまり話したことのないクラスメイト達に祝福されたことは充希はとってとても嬉しい出来事だった。 それから最終種目、対抗リレーが始まった。 遼やクラスの陸上部メンバー、そして真悠もこの競技に出ていた。 真悠はアンカーであった。新人戦の結果を受けてそう決まったのだろう。 タスキをかけた真悠が立っている。充希はこのとき真悠が何を考えていたか、どんな思いを抱えていたか、全く分かっていなかった。 最後のバトンが真悠に渡った。その後ろからうちの紅組も追い上げてくる。充希はその白熱する戦いに興奮して紅組のバトンばかりを見ていた。 ドサッ!!!!! 突如、大きく倒れこむ音が響き、悲鳴が上がった。自分の近くにいた生徒たちも大きな声を上げて騒いでいる。一斉に生徒たちがテント前のグラウンドの方を見て何か言っている。後ろのほうにいた充希は事態が把握できず、何が起きたのかと人の隙間を潜り抜けて人々の視線の先を覗き込んだ。 そこには青い顔をした真悠が足を抱えて地面に倒れこんでいた。

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