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第8話 2人の関係

「お店を休んだら負けな気がする」  強がりの桃はそう言った。村で人気の店となっても二人を良く思っていない人間がいるということだ。オニは悪者ではないと、皆が理解していると思っていたのに。 「負けにはならない」 「だって……」  目の前の黒髪を撫でたオニは、桃の頬に小さな傷があることに気づく。 「こんなところにも怪我を」 「飛んできたガラスで切れちゃったみたい」 「痛くないか」  傷は小さすぎて痛みはほとんど感じられなかった。それより、優しく触れてくるオニの指先に桃の心臓がいつも以上に早く脈を打ち出した。 「うん……」  頬を赤らめて桃はオニを見つめた。 「顔が赤いな、桃。熱か?」 「熱じゃない……」 「だったら、」 「僕……」  オニの指に触れた桃は戸惑た。今から言おうとしていることは、不謹慎かもしれない。自己中心的なことを口にするより、犯人探しや店のことを心配したほうが良いに違いない。  でも、このままではオニが悪者扱いされ、遠くへ行ってしまうような不安感に駆られ、桃は足元を見つめながら口を開いた。 「僕、オニさんといるとドキドキするの」 「それは、」 「自分でもよくわからないの。でも触れられると体がポッて熱くなるし、いないとすごく寂しいの。多分、これが恋なんだなって……」 「だったら、何で泣いてるんだ?」  色白の肌に涙が流れる。いつも以上に紅く染まる頬を拭い、華奢な肩を抱き寄せた。 「オニさん、服が汚れちゃう」 「洗えばいいだけの話だ」 「んっ」  桃の唇は涙に濡れていた。オニは頬に唇を寄せ、口端に接吻をすると顔を離し桃の瞳を見つめた。 「俺は、お前が大切だ。だからこそ守りたいし、傷つけたくない」 「友達だから?」 「お前のことは友達だとは思ってない」 「え……」  驚いた桃は悲し気に眉毛を下げた。好きと言ってくれなくても、最低でも友達だと言ってほしかった。   今日は窓を割られ、ケガをし、友達を失う、最悪最低な日だと思うと、喉の奥が焼けるように痛くなり、胸が締め付けられるように痛んだ。  「ごめん、僕、えっと……僕、散歩してくるね」  このままここにいたら泣きすぎて倒れてしまいそうで、腕を掴む大きな手を振り払い桃は外へと逃げた。行き場所なんて決まっていない。いっそ、実家へ戻ってしまおうか、と考えてみた。 「おい、桃!」  街灯の少ない近所に飛び出した桃のあとをオニは必至で追いかけた。    

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