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第11話 桃太郎のお供たち
「桃さーん、オニさーん!大丈夫ですかぁ!」
「おい、あれって隣町の三兄弟じゃないか?」
「捕まえるぞ!」
大きな声をあげて公園に入ってきたのは、サルとキジとイヌだった。混乱した桃は、またオニが悪者にされてしまうと震えた。足から力が抜け、ゆっくりと地面に崩れ落ちても、オニの服から手を離せずにいた。
「ちっ、逃げるぞっ!」
「俺たちから逃げるなんて100万年早いんだよ」
逃げようとした男の背中にイヌが回し蹴りを入れる。顔から地面に倒れた兄弟を見て、残りの2人が後ずさりをした。
「少しでも脳ミソがあるなら、黙って捕まってください」
麻の縄を手に、キジがじりじりと2人に詰め寄った。
「「「ひぃっ!」」」
自分たちの悪事はバレているのだと3兄弟は察した。平和で幸せそうなこの村を荒らし、人々の財産や宝を奪い、家畜を盗み、藁に火をつけた。何もかもうっ憤を晴らすためにやったことだ。オニと言う名の、珍しい見た目をした青年に罪を擦り付ければ一生捕まらないだろうと目論んでいた。
まさかオニが村人に受け入れられ、可愛いケーキ屋まで開いているとは思ってもいなかった。
愚かなことに、3兄弟はオニを甘く見ていたわけだ。
「桃さん、ケガはないですか?ってうわっ、頭の包帯って店であった事件のやつですか?」
「う、うん……そんなにひどくはないんだけどね」
「ほかにケガは?」
お供たちの向こうで大柄の村人たちに連れていかれる3人が目に入る。
「あの、ケガは大丈夫なんだけど……あの人たちは?」
「警察に連れていきます。村荒らしの犯人はあいつらだって目撃した人が何人か出てきたんですよ」
「目撃?」
「ええ、当時はあいつらに脅かされて何にも言えなかったらしいんですけど、村に戻ってきてから桃さんと楽しそうに店をやってるオニさんを見て、居ても立っても居られなくなったらしいです」
これで一件落着だ、と桃は胸をなでおろした。静かにうなずいたオニはしゃがみ込み桃の体を抱き上げる。
「桃、家に帰ろう」
「うん」
村人たちに優しい声を掛けられながら、2人は家路を急いだ。
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