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第12話 帰宅後の二人 *
ベッドに寝そべる桃の体を、隙間もないほど包み込むのは逞しい腕と心地よい体温だった。
公園から帰ってきてからずっとこうなのだ。無言で自分の体を離さないオニを拒むわけでもなく、桃は静かに心地よい鼓動に身を任せていた。
「桃、お前が飛び出す前に俺が言ったことはな」
チクリと桃の胸が痛みだす。
「友達になりたくないんだ……俺はそれ以上にお前が大切だから」
黒髪で隠れる項にオニは顔をうずめた。嘘は一つも付いていないが、慣れない言葉に顔から火が出そうなほど恥ずかしい。
「それって……僕のこと好きってこと?」
「……そうなるな」
「恋ってこと?」
「それ以上は言うな」
照れ隠しにオニは桃の唇を塞いだ。大きな影が視界を遮り、桃は瞳を閉じる。
「んっ、ぷはっ、息できないよ」
「悪い、止まらなかった」
「ふふっ」
視線が絡むと二人は微笑んだ。誰からともなく顔を近づけ、唇の弾力を楽しみだす。
息継ぎの下手な桃の唇の隙間からオニはそろりと舌を忍ばせた。
「んんっ!」
初めての感覚に腰が浮き、しびれる感触に怖がり逃げようともがき出した。それをオニが許すわけもなく、がっしりと腕で少年の背中を抱き柔らかい咥内を味わうのだった。
「桃、勃ってるのか?」
「うう、だってぇ」
「責めてるわけじゃない。ほら」
布越しから与えられた刺激は桃には強すぎた。びくびくと体を震わせる少年にオニは笑顔を見せる。
「はじめてか?」
「ひゃんっ、なに、が?」
「こうやって触られるのは」
キスをするのも、他人に触れられるのも、恋人ができるのも、桃にとって初めてのことだった。
「はじめて、だよっ。あぁんっ、待って、ゃだ、きもちい」
赤く腫れた唇にオニは吸い付いた。誰のものにもなったことがない少年をどうやって頂こうかとオニは微笑む。
「はぁ、あぁぁんっ!んんーーーーー!」
かわいい啼き声をあげて果てた桃を赤髪のオニは抱きしめた。
「桃、俺がお前を傷つけたくないと言ったのを覚えてるな?」
「んっ、うん」
「なんのことか分かるか?」
「え?」
これだ、とでもいうようにオニは自分の性器を桃の手のひらにこすりつけた。経験のない桃にだって、それが何を意味するのか理解できた。
「おっきい……」
「早くお前の中に挿りたくてしょうがない。これが俺の本音だ。だが傷つけることは絶対したくないんだ」
「心配しないで、僕はあなたを信じてるから」
窓の外は静かだ。悪いことなど起きなかったかのように、夜が更けていく。
2人の影がゆっくりと重なり合っていった。
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