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太陽に焦がれて②
そしてその日の、下校時。
駐輪場で自転車の鍵を開けようとしていた所で、またしても陽に捕まってしまった。
「おーい、咲夜っ!
ちょうどいい所で会った。
...駅までで良いからこのくそ重いカバン、乗っけてってくんない?」
何が哀しくて、よく知りもしないクラスメイトの男の事を、駅まで送り届けてやらなければいけないと言うのか。
...絶対に、お断りだ。
そんな風に思っている事はおくびにも出さず、俺はまたニッコリと微笑み、答えた。
「俺の家、駅とは逆方向だから...。
ごめんね?」
自転車を車輪止めから外し、乗ろうとしたタイミングで。
...彼は俺の言葉が聞こえていた筈なのに、ポイっとカゴに自身の小汚い紺色のリュックを投げ入れた。
「...えっと、塚田君?
俺が言った事、聞こえてたよね?」
顔はまだ辛うじて笑えているはずだけれど、腸 が煮え繰り返りそうなほど苛立っていた。
なのに陽は俺からハンドルを強引に奪い、ニッと笑った。
...嘘だろ。
ホントなんなんだよ、コイツ!
怒りを通り越してバカバカしくなり、つい吹き出してしまった。
「ほら、早くぅ!」
その笑いを了承の返事と受け取ったらしいこの男は、にんまりと笑って催促した。
「信じられないヤツだな、ホント。
まったく、もう...。
今日だけだからな。」
俺はちょっと苦笑して、陽の後ろに続いた。
今日だけだと、きちんと宣言したにも関わらず。
...この翌日も、更にその翌日も俺はこの男に捕獲され、あれやこれやと理由をつけては、駅まで送らされる羽目に陥った。
そして結局俺はこの、身勝手でマイペースな男と二人、毎日どうでもいい話をしながら帰宅する事となる。
...そう。
今にして思えば陽はこの日、俺の意思や感情なんかお構いなしに、俺の世界に強引に割り入ったんだ。
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