8 / 30

溺れる①

「...着たままがいいって、変態かよ。」  俺の言葉に陽は、フンと鼻で笑って答えた。 「男の俺を犯そうとしてるヤツに、言われたくねぇよ。」  再び重なり合う、唇。  今度は積極的に、求めるみたいに舌を陽の方から絡め取られた。  それに驚き、思わず唇を離して聞いた。 「...嫌じゃないのか?」 「んー...。  驚きはしたけど、嫌じゃない...、かな。  先に咲夜の事好きになったの、たぶん俺の方だし。  ...これって広い意味での、『人間愛』じゃね?」  俺に組み敷かれたままクスクスと、場違いな程楽しそうに笑うコイツの瞳にもう、涙は無かった。  俺も釣られたみたいに噴き出して、そのまままた陽の、人よりちょっと大きく厚い唇にキスを落とした。 「ねぇ、咲夜。  手、離してくんない?  ...ちょっと、(いて)ぇ。  脱がさないなら、抵抗しないからさぁ。」  本当に驚くほどいつも通りに、唇を尖らせて陽は言った。  その言葉に嘘はない様に感じられたし、痛い目に遭わせたい訳でも無かったから、言われるがまま彼の手首を解放した。  すると陽は俺の首筋に腕を回し、更なるキスを強請った。  絡み合う、舌と舌。  貪るように与え合い、奪い合う。  キスだけでは我慢出来なくなった俺は、膝で軽く撫でるみたいにして、ヤツの股間を刺激した。 「陽...、勃ってる。」  クスリと笑い、耳元で囁いた。  瞬時に陽の白い肌が、耳まで赤く染まる。 「せ...、生理現象だしっ!  そういうお前も、勃ってるじゃん。  ...さっきから、当たってんだけど。」  真っ赤な顔のまま、軽く睨み付けられた。 「うん、当然。  ...陽の反応が、可愛い過ぎた。」  今度は何も答える事なく、ふるふると。  ...俺の腕の中、陽は羞恥に震えた。 「触って欲しい?」  焦らすみたいにそっとまた、膝を揺らすと 潤んだ瞳で陽は俺を見上げ、そして小さく頷いた。  見せ付けるように、わざとゆっくり彼のハーフパンツを下ろしていく。 「脱がすなら、一思いにさっさとやれよ。  ...変態。」  相当恥ずかしかったのか、両手で自身の顔を覆い、陽は言った。 「はいはい、どうせ変態ですよ。  ...でもその変態に脱がされて、更に硬くしてる変態も居るけどな。」  言葉でからかいながら、下着の上から優しく何度もその形をなぞる。  すると陽は面白いくらいビクビクと体を震わせ、俺の視覚と指を楽しませた。 「...他人に触られるのは、初めて?」  ゆったりとした緩慢な手付きで、彼の敏感な場所を弄びながら問う。 「当たり前じゃん...聞くなよ、そんな事。」  口では悪態を吐きながらも、体は素直に俺の指先に反応を返した。 「あはは、そっか。  ならこれからも、俺以外に触れさせんなよ。  ...わかった?」  下着の上からでもわかるほど隆起したそこに、唇を這わせる。  するとここまでされるとは思っていなかったのか、陽の体が、水揚げされたばかりの魚みたいに跳ねた。 「ねぇ...。  わかったか、って聞いてるんだけど。  ...返事は?」  ゆるゆると、ちょっと(くび)れているところや、丸い球状の部分に丁寧に舌を這わせていく。  でもそれは直接的な快楽には繋がらず、陽は切なげに腰を揺らした。 「わかっ...たっ、わかったから...っ!  咲夜、意地悪ばっかりしないでっ!」  先程とは異なる種類の涙を、瞳いっぱいに溜めて。  ...陽は俺に、すがり付くみたいに抱き付いた。
ロード中
ロード中

ともだちにシェアしよう!