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人生で一番幸福な日①
そしてその、翌日。
昨日同様、陽が家に遊びにやって来た。
ゲームをしたり、他愛もない会話を楽しんだり...そして合間に、何度もキスを交わした。
「...咲夜って、絶対キス魔だよね。」
クスクスと悪戯っぽく、陽が笑う。
「んー、どうだろ?
あんま経験ないから、分からないけどな。」
ククッと笑って、答えたんだけれど。
...視線を感じて横をみるとそこには、不機嫌そうに唇を尖らす、陽の顔。
「えっ...、何怒ってんだよっ!?」
驚き、両頬を手のひらで挟み、強引にこちらを向かせた。
「あんま経験はない、って事はさ。
...俺以外とも、こういう事してたっていう事だよね?」
あぁもう、コイツってば...。
何でこんなに、可愛いんだよ。
思わず噴き出すと、陽はますます唇を鋭く尖らせ、俺の鼻先に噛み付いた。
「...あるよ。
中学の時、女の子と付き合ってた。
でもそれは、単なる好奇心みたいなもんだったから。
...本気で好きになった相手は、陽が初めてだよ。」
にっこりと微笑み、まだ尖ったままの唇に口付けた。
「咲夜ってさ、何て言うか...たらしだよね。
でもって、口がうまくて...詐欺師にでもなったら、良いんじゃない?」
真っ赤な顔のまま、陽は言った。
「そんなの、なりたくないし。
...それに俺がもし詐欺師になって、他のヤツにこういう事しても、お前は平気な訳?」
笑いながら、またキスをして。
...ねっとりと、舌先を自身の舌で絡め取った。
「嫌に、決まってるじゃん。
...ホント、口が上手いよね。」
唇を離して飽きれ口調で、そう言って。
...今度は陽の方から、キスをしてくれた。
お互いを貪り合うみたいにまた、何度も口付けを交わして。
それから俺は陽の体を床に押し倒し、紅潮した彼の頬に触れながら、聞いた。
「...覚悟しとけって昨日言われたの、覚えてる?」
ますます真っ赤に染まる、陽の顔。
「ちゃんと準備も、してきたから。
...中も綺麗なはずだから、大丈夫。」
微笑んで口にされた、想像以上の覚悟につい吹き出した。
「やる気、満々かよ!
...ったく、マジで可愛すぎ。」
力一杯抱き締めて。
それからコイツの服を脱がそうとしたんだけど、そこで手を止められた。
不機嫌さがつい顔に出てしまったのか、陽はちょっと怯えたような表情で、俺の事を見上げた。
「...覚悟、出来てるんじゃねぇの?」
すると陽は目蓋を一瞬だけ閉じて、それからゆっくりと開き...ニヤリと笑った。
「...着たまま、やろうぜ?
俺、変態だからさぁ。」
ククッ、と笑うその表情はいつも教室で見掛ける、陽気でヤンチャで、気紛れでちょっぴりワガママな人気者の顔。
でも、どうしてだろう?
...見慣れているはずのその顔に、何故か違和感を覚えた。
しかしそんなのは陽に触れ、そして触れられると、一気に霧散した。
二人、まるで獣にでもたったみたいにただお互いの唇を求め合い、貪り合う。
上の服を脱がせるのは抵抗する癖に、陽は俺にされるがまま素直に下着を脱がされ、そして体を俺に預けた。
事前に調べて得た知識をいかし、俺が用意していたワセリンを手に取ると、さすがに恥ずかしくなったらしい彼は視線をそらした。
そんなコイツの姿に刺激され、嗜虐心を煽られて、陽自身に俺の指先にそれを塗るよう命じた。
「うぅ...。恥ずかしいよ、咲夜。
俺がしないと、駄目?」
涙目で問われ、自然と口角が上がる。
「駄目に決まってるじゃん...。
早くしろよ、陽。
そのまま突っ込まれたら、痛いのはお前の方だぞ?」
その言葉に陽は、小さく体を震わせた。
そして俺に言われるがまま、そのねっとりとした半透明の物を手に取り、俺の指先に伸ばした。
可愛い、可愛い、俺の陽。
頭を優しく撫でてやると、彼はふにゃりと無垢な笑みを浮かべ、俺に口付けた。
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