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崩壊③

彼の肩から手を離し、吐き捨てるみたいに言った。 「何も気付かずにお前に溺れる俺の事、心の奥底でずっと笑ってたんだよな?  ...ホントお前、最低だな。」  その言葉を聞き、真っ直ぐな瞳を俺に向け、陽は必死に訴えた。 「違うっ!  それは違うんだ、咲夜っ!」  俺に向けて伸ばされた手を振り払い、陽の事を睨み付けた。  すると陽はグッと唇を噛み、また綺麗な涙を流した。 「何が、違うんだよ?  もうお前には、騙されないから。  いいよ...陽。  お前の望む通り、全部終わりにしてやるよ。  ...その代わりもう二度と、俺に話し掛けんな。」  視線をそらし、静かな口調で告げた。  陽は涙を拭って身支度を整え、リュックを背負うともう一度俺の方へ向き直り、小さな声で呟くみたいに言った。 「咲夜...大好きだよ。  ...でも咲夜にも、やっぱり嫌われちゃったね。  騙すつもりは、無かったんだ。  ...本当に、ごめんね。」  そのまま抱き締めて、自分だけのモノにしたかった。  騙されてると分かっていても、側に居たかった。  でもこれ以上続けて、自分が傷付くのも、陽を傷付けるのも怖かった。  だから俺は、冷たく笑って彼の事を突き放したんだ。 「そういうの、いらないから。  ...お前なんか、もう好きじゃない。」  そしてそのまま、俺達の長くて短い夏休みが終わった。  こんな身代わりにすらなりきれなかった俺との一夏の過ちなんて、アイツにとってはなんて事ない、とるに足らない出来事だと思ったのに。  ...新学期が始まっても、陽が学校に来る事は無かった。

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