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本当のアイツ③
なおも何も言えないでいる俺の隣に腰を降ろし、陽は続けた。
「やっぱり、意外だった?
でも僕はそこで、割と優秀な方だったんだよ。
学内の順位も、常に上位をキープしてたし。
でも中三になって、すぐの頃からかな。
...僕に対する、理不尽で陰湿な苛めが始まったのは。」
俺の手から写真を奪い、笑いながらそれをそのまま床へと投げ捨てた。
俺にはこれまで見せた事のない、暗い光を瞳に宿して。感情を無くしたみたいなその表情が、瞳が悲しい。
本当は今すぐコイツの体を強く抱き締めたかったけれど、それはグッと堪えた。
「いじめって...一体、何されたんだよ? 」
俺の問いに陽は少し視線をさまよわせ、そしてするりと着ていたシャツを脱ぎ捨てた。
これまでどれだけ俺が求めても、決して脱ごうとはしなかったのに、驚くほどあっさりと。
そして俺に背を向けた彼の背中には、大きな火傷痕 のようなモノがあった。
時間が経過している感じだったから、痛みは無さそうだったけれど、その痕は残り続けるのかも知れない。
それは体だけでなく、彼の心にも...ずっと、永遠に。
また小さな声で、ひとりごとみたいにポツポツと呟くみたいに言った。
「この火傷痕...、汚いし、みっともないよね。
ビックリした?
...やっぱり僕の事、嫌いになった?」
今にも泣き出しそうな癖に無理矢理笑顔を浮かべて振り返り、陽は聞いた。
でも俺はそれが汚いとか、みっともないとは全く思わなくて。
不謹慎かも知れないけれど、光を浴びて金色に輝く髪と相まって、それはとても綺麗で。
...まるで片翼の、天使みたいだと思った。
「いや...、そんな事ないよ。
...そんな火傷の痕くらいでお前の事、嫌いになんかなるはずがないだろ?
それ、同じ学校のヤツにやられたの?」
陽は小さく頷き、そしてまた笑った。
「親に心配かけたく無かったから、それまでは何されても我慢してたんだけどね。
冬休みに入る、ちょっと前かな。
熱湯を、かけられたんだ。」
あまりにも陽らしい、優しい理由。
でも俺がもしその時、コイツの側に居てやれたなら。
...そうしたら、守ってやれたかも知れないのに。
そんなのは絶対無理な話とわかってはいたけれど、それでもそう望まずにはいられなかった。
「あまりにも熱くて、痛くて、気絶しちゃって。
それで両親にも、全部ばれて。
...その日からさすがに怖くなって、登校出来なくなっちゃったんだよね。」
「何だよ、それ。
...お前、何一つ悪くないじゃねぇか。」
怒りで声が、震えた。
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