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4.世界で一番眠たい時
「なぁ先輩」
「なんだ後輩」
今日は僕のことを素直に『先輩』呼びするつもりらしい。
よしじゃあ僕も彼を後輩呼びしてやろうじゃないか。
「……やっぱりつまんねぇ。ねぇ綾真」
「なんだそれ」
直ぐにまた呼び捨てに戻しやがった。なんだ根性無しめ。
そして今日はやけに喋る。余計なことをペラペラと。
やれ今日の体育の測定で良いタイムが出たとか、宿題忘れたとか。
僕がついつい相槌打ったら、調子付いたように喋るものだから面倒だ。
……でもまぁ。こいつの声は、少し低くて聞きやすい。耳障りも悪くないから聞き流すには良いかもしれないな。
「なぁ聞いてる? 綾真ぁ」
「聞いてる聞いてる。……ズボンのチャックが全開だった話だろ?」
「なんだそれ。ちょっ、聞いてないじゃん! ……あれ、綾真眠い?」
確かに眠い。突然ふっ、と眠気が。机に突っ伏していたら、本当に眠ってしまいそう。
「綾真、ちょっと寝なよ。時間になったら起こしてやるからさ」
「ん……ぅん、頼む……」
ヤバい。本格的に脳みそにモヤがかかってきた。
ふわふわして目が閉じて、何かに引っ張られるように意識が……。
「……おやすみ。綾真」
―――完全に意識が落ちきる瞬間、僕の髪が何かに触れられてこめかみ辺りに小さく音を立てる。
ああ多分、唇だと何故か思った。
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