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5.世界で一番理解不能

移動教室で渡り廊下を歩いていた。 そしたら向こうから下級生の集団が歩いてくる。 「……あれ、亮二君じゃない?」 京子が余計な事を耳打ちしてきたけど、聞こえないフリをして軽くシカトした。 数人の男女に囲まれて、まさにリア充陽キャ的な空気振りまいて騒々しい奴ら。 キャッキャと楽しそうに。中学生かよって思うのは別に妬んでとか羨ましいとかじゃないからな。 単にうるさいのは嫌いなだけ。 「ほらあれ」 「うるさいな……」 指さすな。分かるっつーの。集団の中心で、爽やかな笑顔大安売りで振りまいてる八方美人野郎だろ。 あの空き教室でのあざとい顔もきっと見せてんだろうな。 ……そう思うと、すごく胸糞悪い。 そっちを見ないように、目を逸らしながら通り過ぎることにした。 「ねぇ綾真、早く行こ」 「あぁ? 分かってるよ」 京子にせっつかれ、腕を引かれるように移動を急ぐ。 「……」 ―――それでもすれ違う瞬間、ついついあの背格好を目で追ってしまう。 向こうも同じだったのか、横目で見た視線がぶつかり微かな衝撃を持って僕を赤面させた。 ……嗚呼、見ちまった。くそ、あいつ睨みつけやがる。なんだよ、普段の腑抜けた面はどうしたんだ。 「あのー。綾真、大丈夫?」 能天気な彼女の問いかけに答えることも、顔を上げることすら出来ないくらい首から上が燃えるように熱かった。

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