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7.世界で一番深刻ぶった

あ、うろこ雲。 薄雲とか最近見てないなぁ。 そう言えば。虹のように緑や赤に彩られる雲もあるらしい……彩雲、見てみたい。 ―――そんな事をつらつらと考えながら。いや、考えようと努めてた。 隣に誰もいない。あー、いつもいなかったっけ。 「あの馬鹿野郎」 好き勝手して、突然どこか行った。そして次の日から3日間。もう来ないとか……なんだやっぱり揶揄われたのかとようやく気がつく僕はマヌケか。 ムカつく。人をなんだと思ってんだよ。 僕は……僕は、僕、ええっと。 「相変わらずこんなとこでボケっとしてんの?」 「なんだ、京子か……」 いつの間にか斜め後ろにいたらしい。でも、なんだか色々めんどくさくなって驚かなくなった。 「ったく、なに惚けてんのよぉ。……まさか授業サボる気?」 「あー。それもいいかもな」 どうせもうすぐ冬休みだし、ろくな授業しないだろう。 それに教室にいたって、今はなんにも考えられない。 「あーぁ、恋の病ってやつぅ?」 心底呆れたという体で京子がため息をついた。 彼女に呆れられるなんて。なんだか心外だけど、仕方ないか。 「恋なんて、してないぜ」 「そんな顔して何を言うのよ」 今度はせせら笑われた。 ころころと変わるその表情は確かに愛嬌満載だな。可愛いかと聞かれたら……うん、素直に可愛いよ。僕の幼馴染は可愛い。 なぜかすごく悔しいけど、僕なんかよりずっと可愛い奴だよ。この女はさ。 「そう言えば。亮二がさ……僕のこと好きだってさ」 「へぇ」 彼女は驚かなかった。それどころか軽く頷いている。 予鈴が鳴って、廊下がバタバタと騒がしく……ならない。ここは少し離れた場所の空き教室だから。 「晴れて相思相愛じゃないのよ。おめでと」 「はぁ?」 ……なんでそうなる。 不可解な発言を始めた彼女に、また腐女子思考が出たのかと文句を言おうと口を開きかけた。 「綾真、もう一度言うわ。『意識しちゃってるじゃん』」 「おい、どういう……」 「嫌いの反対は無関心よ? あとは自分で考えてみたら」 言いたいことだけ言って、彼女はさっさと教室を出て行った。 やっぱり一人取り残された僕は、その言葉の意味をぐるぐる考え始める―――。

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