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クラスメイトということもあり、このまま帰って面倒なことになってもまずいと思った遥人は、無言で再び椅子へと座る。
すると、机一つを挟んで向き合う格好になってしまったから、落ち着かない距離に遥人は、ほんの少しだけ椅子を引いた。
「そんな警戒しなくていいから」
遥人の行動を見咎めた男が苦笑しながら告げてくるが、上手い返事も浮かばないから黙って小さく頷き返す。
けれど、引いた椅子を戻す気にはなれなかった。
一言声を掛けられただけで、こんな風になるなんて……自意識過剰だと言われそうだが、遥人には遥人の事情がある。
目の前に座っている男、今泉玲 とはクラスメイトだが、夏休み明けの今に至るまで挨拶程度しかしたことがない。更に、玲は遥人にとって苦手な部類に入る生徒の一人だ。
別に嫌いという訳ではないが、住む世界が違っている。
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