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まず、遥人はクラスメイトから陰で、「ガリ勉」と呼ばれるとおりの容姿をしている。黒縁の眼鏡を掛けていて、色白で、線も細く背も低かった。
体については遺伝だろうが、それについて何を言われても遥人はまるで気にならない。
シンプルな眼鏡は野暮ったくならない物を選んでいるが、それは悪目立ちしない為で、狙いどおりクラスへと埋没し、たまに会話くらいはするけれど、友達と呼べる人間はいなかった。
けれど決して無視されたり、イジメられたりしている訳ではない。
正確に言えば、一時はそうなりかけたのだが、今はすっかり落ち着いていた。
それに引き替え目の前の男はクラスで……というよりも、学校内で一番目立っている生徒だ。どこにいても目を引く容姿は中性的にも見え、体格的に恵まれていているから、モデルのようだと誰もが言う。
ファンも沢山いるようで、校内でも、校外でたまに見かけるときも、常に取り巻きに囲まれていた。
さらに、性格も良くいつも笑顔を絶やさない。しかも、国会議員の息子ときては、欠点など見あたらなかった。
そんな彼が、平凡を絵に描いたような自分に何の用事だろうか?
「じゃあ……単刀直入に言うけど、俺と付き合って」
「……は?」
ようやく思考が追いついてきたところでそんな爆弾を投げられたから、思わず間抜けな声が出るくらい遥人の頭は混乱した。
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