7 / 338

4

「だから、恋人になって」 涼しげな笑みを浮かべながら、あり得ないことを告げる彼から目をそらせなくなってしまう。 「とりあえず、友達からでいいから」 「……っ!」 机の上に置いていた手を掴まれたから、咄嗟に遥人は振り払った。 「なにかの……罰ゲーム?」 「そんなくだらない遊びはしない」 確かにその通りだろう。クラスメイトだから知っているが、彼はそんな事をするような人間ではない。憶測でしかないけれど、わざわざ自分の良い評判に泥を塗るようなまねはしないだろう。 「……無理です」 ならば、答えなければならないと思い、遥人ははっきりとそう告げた。 「それは恋人として? 友達として?」 「どっちもなれない……です。今泉さんなら俺じゃなくても、なりたい人が沢山いますよね。話がそれだけなら、俺、帰りますから」 「待って」  立ち上がりかけたところで突然、右の手首を掴まれる。 「大雅の事が好きだから?」 「……ちがいます。ど、どうして宮本さんが出てくるんですか? っていうか俺、男同士で恋愛とか、そういうの、無理です」 「そう、遥人が大雅を好きじゃないなら、チャンスはあるってわけだ」 微笑む彼の雰囲気が、いつもとはどこか違っていた。 男同士は無理と言ったのに、その部分は完全に無視をされ、しかも名前まで呼び捨てにされてしまっている。

ともだちにシェアしよう!