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今、逃げ出したところで何かが解決する訳ではない。だが、今後二人にならないように気を付けて過ごしさえすれば、卒業までの半年くらいはどうにかなるような気がした。 「っ!」 しかし、遥人の必死の逃走も、校門を出たところで肩を掴まれ終わりを告げる。 ――もう、ダメだ。 自分が何故、ここまで玲に拒絶反応を示してしまうのか分からないけれど、目の前が真っ暗になるような感覚に陥った。 振り返るのは怖いけれど、ここは外だから教室に二人きりでいるよりはマシだと思うことにして、遥人は乱れた息を整え心を落ち着かせようとする。 「轢かれるぞ」 しかし、背後から聞こえてきたのは想像していた声ではなく、玲では無いと分かった遥人の鼓動はだけど……更に大きなものとなった。 「あ……」 「車の前に飛び出すところだった。何か……あったのか?」 間違えようのない低音に遥人がゆっくり振り向くと、自分より頭一つ以上は背の高い男が立っている。 「ごめん、ありがとう。ちょっと急いでて……」 「そうか。気を付けろ」 抑揚なく、無表情に告げてくるが、どこか優しい感じがするのは彼が自分を助けてくれたのが、これで二回目だからだろうか。 「宮本さんは、まだ学校にいたんですか?」 「……ああ、教師に呼び出されてた」 「そう……ですか」 何故呼び出されていたのかなんて聞くのも慣れ慣れしい気がしたから、それ以上は何も言えずに、信号が青に変わるまでの短い間、ただ並んで立っていた。

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