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その間、チラチラと後ろを振り返るけれど、玲の姿は見えないから、もしかしたら……いつも一人でいる遥人を、からかってみだだけなのかもしれないと思う余裕もできる。 「靴、無くしたのか?」 「いえ、あの、履き替えるの忘れてしまって……」 信号が青へと変わり、歩き出そうとしたところで、彼が突然尋ねてきたから、遥人が咄嗟に言い訳をすると、いつも表情を変えない彼が、珍しく口角を僅かに上げた。 「お前、見かけによらず抜けてるよな」 「そうかも……しれません。要領も良くないですし、それに……」 どう答えればいいのか迷い、しどろもどろに言葉を紡ぐが、上手く話を続けられずに尻すぼみになってしまう。 とにかく会話を続けたいなどと思ったのは初めてで……必死に続きを考えるけれど、馬鹿みたいに言葉が浮かんでこなかった。 「確かに、要領は良く無さそうだ」 喉で笑った大雅がポツリと呟いたから頷くが、やはり言葉は返せないまま、道が分かれるまでの間、会話も交わさず並んで歩く。 ――おかしい。心臓が……壊れそう。 このときの遥人はまだ、自分が彼に抱く感情が、恋に近いという自覚さえ持ち会わせていなかった。

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