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挨拶をして大雅と別れ、一人暮らしのアパートへと遠回りして遥人は向かう。短い間に様々な事が起こったから、このまま真っ直ぐ帰るよりも、外の景色を眺めながら気持ちを少し落ち着かせたかった。
夕飯の買い物ついでに30分ほど歩いた遥人が、自宅へと帰り着いた時には6時を少し過ぎていた。
住んでいるのは築10年ほどの1DKの物件だが、鉄筋造りのせいかほとんど他人の生活音も聞こえず、自分で選んだ訳ではないが、遥人はここが気に入っている。
――こんなの見たら、宮本さん、びっくりするだろうな。
遥人の通う高校は、良家の子息のみが通うような名門私立男子校で、中でも格上の生徒たちは、登下校に車の送迎がついていた。
そんな学校に通う生徒が、ボロいとまではいかないまでも、質素なアパートで一人暮らしをしているなんて、驚かれないはずがない。
大雅が歩いて登下校をしていることは、たまに見掛けて知っていた。
だが、あの学校へ通うくらいだから、彼の家もまた、世間では上流と呼ばれる家庭に違いない。
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