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彼は玲とは逆の意味で、人目を引く存在だ。 ややつり上がった切れ長の目と、筋の通った高い鼻梁は、男らしく精悍な印象を周囲へと与えている。 体格の良さも相まって、高校生とは思えないほどの威圧感を放っているが、軽く遊びを持たせた黒髪が、見た目の厳つさを多少なりとも緩和しているように見えた。 酷薄そうに見える唇が笑みを象ることはなく、他人と関わる事を嫌うため、近付く輩はまずいない。 だからなのか、いつからか『ヤクザの息子』という噂が、あちらこちらから聞こえるようになったけれど、きっと相手にされない生徒がやっかみで言っているのだろう。  ――でも、今日は……笑ってた。 ほんの少しだが会話もした。遥人自身、人とあまり関わらないよう過ごしているが、人が嫌いな訳ではなく、事情を抱えているからだ。  ――もしかしたら……。 大雅も遥人と同じように、何か訳があるのかもしれない。もちろん勝手な想像で、そんな風に考える事が彼に失礼と分かってはいるが、そう思うことで遥人の心はほんの少しだけ軽くなった。 「えっと……」 そんな事を考えながら、外階段を2階へと上がり、鞄から取り出した鍵で自室のドアを開いた時、階段を駆け上る靴音が聞こえてきたから条件反射で振り返る。 「……っ!」 そこからは……まさに一瞬の出来事だった。

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