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先ほど逃げてきたはずの男が、遥人を開いたドアの中へと、抵抗する暇も与えず強い力で押し込んだのだ。 「なっ……なにをっ!」 勢い余って倒れ込むと、背後でカチャリと鍵の閉まる音がする。 「逃げきれると思った?」 振り返るのが恐ろしくて、這って前へと逃げようとすれば、アキレス腱を踏みつけられ、「ここ、切れたら痛いだろうね」と頭上から声が降ってきた。 「……どうして、こんな……」 「まだ話終わってないのに、遥人が帰るのが悪い。習わなかった? 人の話は最後まで聞きなさいって」 諭すような声音だが、状況が見事にそれを裏切ってしまっている。アキレス腱の上に置かれた足に少しずつ力が込められ、遥人の中では痛いというより恐怖の方が大きくなった。 「で……出て行ってください!」 思い切って体を返せば足が自由になったから……後ずさりながら玲へと告げるが、こちらを見下ろす彼の表情は暗くてよく分からない。

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