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「遥人が俺と付き合うっていうなら、今日のところは帰ってもいいよ」 抑揚を持たない声音は、いつも学校で耳にするものと響きがだいぶ違っていた。 「……んで、突然、そんなこと……言うんですか?」 思いもよらない展開に、隠しようもなく声が震える。玲とは3年生で初めて同じクラスになったけれど、会話らしい会話をした記憶はただの一度もないし、彼と違って自分には目立つ要素が何一つない。 「なんでって……気に入ったから?」 一歩こちらへ近付いた彼が疑問系で答えるが、そんな理由で家まで来られては迷惑だ……と、遥人は思った。 いや、どんな理由があるにせよ、自分のスペースに土足で立ち入るような真似はして欲しくない。 「とにかく、今日は帰ってください。月曜まで……考えますから、だから……っ!」 必死に言葉を紡ぐ途中、いきなり膝の辺りを蹴られ、あまりのことに頭の中が一瞬だけれど真っ白になった。 「めんどくさいな。折角、手順を踏んでやってんのに」 「なっ……なにを……」 遥人が狼狽えている隙に、舌打ちをした玲が馬乗りになってきて……避ける間も無く押し倒され、頭が床へと打ち付けられる。

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