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「やめて……やめてくださいっ」
「遥人は俺が嫌いだろ?」
「う゛ぅっ」
懇願空しく膝を使って鳩尾のあたりを圧迫され、苦しくなった遥人は必死に彼の体を押そうとするが、逆に両方の手首を掴まれ、頭の上へと固定された。
「そういう存在って稀有 だから、気になって観察してたら、ハマっちゃった」
暗がりに目が慣れたのか、整った顔に笑みを浮かべ、こちらを見下ろす双眸と正面から視線が絡む。彼が何を話しているのか聞こえていないわけではないが、今は苦しみがあまりに強くて理解するまでに至らない。
「3年になって初めて入った教室で、他の奴等と同じように、俺に挨拶しにきただろ。気になったのはあの時からだ」
世間話でもするみたいに、淡々と話をしながらも……玲は空いている片手を使って器用に遥人のネクタイを外し、鳩尾を圧迫するのは止めずに手首を固く縛りあげた。
「一人だけ、嫌々なのが顔に出てた。俺、昔からそういうの……分かっちゃうんだ。目立ちたくない遥人は、みんなと同じ事をしないと、後々面倒だと思ったんだよな。違う?」
「……っ、うぅ」
「あ、ごめん強すぎた」
意識を失う一歩手前で、腹の上から足が退かされ、一気に肺へと息を吸い込んだ遥人はゴホゴホと何度もせき込む。
その間、労うように額と頬を撫でられるけれど、「大丈夫?」と、優しく問われても更に恐怖は募るばかりで、答えることなど出来なかった。
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