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「ど……して?」 何故大雅が傍にいるのか理由が全く分からない。 だから、懸命に声を絞り出すと、少しの間沈黙が流れた。 「余計なことは考えなくていい。学校には病欠届を出しておいたから、今はゆっくり休め」 「でも……」 「いいから」 紡ごうとした言葉は彼の指一本で阻止される。唇に人差し指を軽く当てられただけなのだが、物を言わせぬ彼の雰囲気に、それ以上なにも言えなくなった。 きっと、今は何を尋ねたとしても答えて貰えないのだろう。 「ん……」 髪の毛を撫でる手の優しさに、思わず安堵の吐息が漏れる。こんなことはありえないから、きっと夢だと考えながらも、強い睡魔に抗いきれずに遥人は再び眠りに落ちた。  *** 「おはよう、風邪、大丈夫?」 「うん。だいぶ良くなった」 「でも声がまだ変だな。あんま無理すんなよ」 「ありがとう」 朝、教室へと入った遥人が自分の席に座ろうとすると、前の席の生徒がこちらを振り返り、心配そうに声をかけてきた。 笑みを浮かべて返事をすれば、頷いた彼は前へ向き直り違う生徒と会話を始める。 今日遥人は、一週間ぶりに登校したのだが、ここに来るまで心の中は不安と恐怖で一杯だった。 自分が休んでいる間、玲が他の生徒達に、自分を孤立させるような指示していないかと怯えていたから、何事も無かったような状況に胸をなで下ろす。 椅子に座ると同時に大雅が教室へと入ってきたが、これまでと同様に、こちらを気にするそぶりはなかった。 玲に関しては登校しない予定であると、予め聞いて知っている。

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