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 ――よかった。 予鈴が鳴っても空席のままの玲の席へと視線を移し、遥人は小さく息を吐き出して、鞄から出した教科書を机の中へと移し始めた。 どういう経緯でそうなったのかを尋ねることはできなかったが、休んでいた1週間……甲斐甲斐しいと言えるくらいに大雅は自分の面倒をみた。 最初に目を覚ました時には、近くにある病院の個室で点滴を受けていたのだが、再び意識を落とした遥人が、次に意識を戻した時には、既に大雅の自宅だという建物へ移動したあとで――。 驚きはしたけれど、高熱を出し、まともに動けない状況の中、『寝てろ』と言われて結局のところ彼に甘える形になった。  ――あんな、ことまで……。 前方の席に座る凛々しい後ろ姿を見るだけで、遥人は自分の頬のあたりに熱が集まってくるのを感じる。 彼は、傷ついた遥人の体へと丁寧に薬を塗ってくれた。 体だけなら良かったのだが、無理な挿入に傷つき腫れた排泄口の中までも――。 もちろん、自分でするから大丈夫だと遥人は必死に訴えたのだが、『自分じゃ奥まで塗れないだろう?』と、真剣な表情で言われ、おまけに熱も高かったから、抵抗らしい抵抗すらもできないまま、恥ずかしい格好を彼に晒すことになってしまった。 『安心していい。ここは、離れだから誰も来ない』 大雅がそう告げてきた通り、滞在中、彼以外の誰の姿も見なかった。 滞在したのは和風建築の趣のある平屋建てで、遥人が寝ている部屋の他に、2つの部屋があると言っていた。

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