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「遥人は動かなくていい。俺が全部やるから」 喉の辺りをじわじわと押され、恐怖に駆られた遥人は必死に頷き返す。すると、褒めるみたいに顎を撫でられ、上半身を起こされた。 「そんなに緊張しなくていいよ」 予測出来ない彼の行動に竦み上がってしまった遥人は、少しの抵抗もできないまま、下着以外の全ての衣服をあっという間に取り払われる。 「細いな。50キロある?」 「……ある」 アンダーシャツを脱がされながらも彼の質問に答えると、「へえ、意外」と答えた玲は、はぎ取ったシャツを放り投げ、それから震える遥人の体をいとも簡単に抱き上げた。 「あ、あの……着替え、するって……」 貧弱な体型とはいえ遥人だって立派な男だ。いくら弱っているとはいえ、女の子にするような扱いを受けて黙ってはいられない。 だから、止めてほしいと言えない代わりに遥人は玲へと問いかけるけれど、彼はそんな遥人の意図を汲み取ってなどくれなかった。 「室温は上げたから、すぐに暖かくなくなる」 遥人の問いを完全に無視して、玲はまた頬へキスをしてくる。優しげな笑みを浮かべてはいるが、どこか狂ったような玲の言動に、彼の中にある残虐性を身をもって知っているだけに……自分で歩くという一言を発することができなくなった。 「いい子」 黙った遥人を一瞥すると、玲は室内を奥へと進み「ここが寝室」と告げながら、隣の部屋へと入っていく。

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