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「誰かいるのか?」 聞き覚えのある低い声音に一瞬頭が白くなる。相手が誰かを考えるだけの余裕はまるで残っていないから、遥人は迷わず目の前に立つ男の制服を、縋るように両手で掴んだ。 「こんなとこで何をしてる。保健室に行ったんじゃなかったのか?」 「そうなんだけど、御園君がここに入るって聞かなくて……熱のせいでだいぶ錯乱してるみたい。どうしようか焦ってたから、来てくれて助かったよ」 「あ……あ」 「確かに熱いな。すぐ保健室へ運んだ方がいい」 額へと触れる冷えた掌につられて遥人が顔を上げれば、少しだけ眉根を寄せた大雅がこちらを見下ろしている。 「一緒に行ってくれるかな?」 背後から響く堀田の言葉に遥人が体を強張らせると、大雅はふらつく体を引き寄せ「俺がいくからいい」と答えた。 「そう。なら、あとはお願いしようかな」 あっさりと引いた堀田の声に、強い違和感を覚えるけれど、今の遥人にはその正体を見極めるだけの余力がない。 「大丈夫か?」 「んっ……うぅ」 労るような大雅の問いかけに安堵したのも束の間のことで、今度は腰へと回された腕に体が反応してしまい……遥人は咄嗟にこの空間から逃げだそうとして体を捩るが、刹那首筋へと衝撃が走り、どうにか保っていた意識は一瞬にして闇へと落ちた。

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