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目を覚まして辺りを見ると、既に日は高くなっていた。
注意深く耳を澄ませるが、シンと静まりかえった部屋に自分以外の気配はない。
「……うぅっ」
手足をゆっくり動かしてみると拘束はされていないようだから、遥人は小さく息を吐いてから起き上がり、自分の体を見下ろした。
着せられている水色のパジャマはサラリとしていて着心地がいいが、サイズはだいぶ大きめだから、胸元に残る鬱血痕や、自分の体を戒めていた縄目の痕が、嫌でも視界に入ってしまう。
――こんなこと……。
いつまでも続くはずがないとは、流石に思えなくなっていた。
死を選ぶことが悪いことだというのは理解しているが、今、自分が消え去ったところで、悲しむ人はきっといないんじゃないだろうか。
そんな、自棄な思考に陥った遥人は自分の舌へと歯を立てるけれど、刹那体が動かなくなり、目の前が白い色へと染まった。
『遥人、これは誰の体?』
『や、ああ……』
『怖くないよ。ほら、俺はここにいる』
昨晩……玲の腕の中に抱かれ、下から幾度も穿たれながら、言われ続けた言葉が遥人の頭の中で木霊する。
『あ、れい……れい、たすけて』
口腔へと入れられていた堀田のペニスが抜かれたあと、脚の拘束も解かれた遥人が玲へと助けを求めたのは、恐怖の対象である堀田よりも玲のほうが優しかったからだ。
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