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「あの、今日は……自分の家へ帰ります」
「家って……あのマンションにか?」
登校を再開してから3日目の帰り道、遥が大雅へそう伝えると、足を止め振り返った彼が不思議そうに尋ねてきた。
「そうじゃなくて、アパートに帰ります」
誤解を解くためそう答えれば、眉根を寄せてこちらを見るから、漠然とした不安に包まれ遥人は言葉を詰まらせる。
これでも、月曜から3日間、遥人なりに考えたのだ。
いつまでも大雅の家で世話になるわけにもいかないし、この3日間はどういう訳か欠席していた怜だけど、このまま登校して来ないなんてことは到底あり得ない。
だから一旦アパートへ戻り、自分の荷物をまとめながら、住み込みで働けるような場所を探そうと考えたのだ。
最初はテストで3位に入る事しか頭に無かったが、落ち着いて考えるうち、高校生とはいえもう18才なのだから、御園という名前を捨てて自立できるのではないかという結論へとたどりついた。
幸い、アパートのスペアキーは机の中に置いてあったから、家に戻って貯金を降ろせば、当面生活していけるだけの資金はある。
祖父に探される可能性はあるが、地方へ行けば見つかる確率もかなり低くなるはずだ。
「それは無理だ」
そんな計画を大雅に話すつもりは無かった遥人だが、この状況から逃げ出す手段を頭の中で巡らせていると、思わぬ言葉が降ってきたから思わず「えっ?」と声がでた。
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