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「じゃあ、俺は出掛ける。戸締まりだけはしておけ」
「あの……」
「なんだ?」
「……いえ、なんでもありません。いってらっしゃい」
毎日のように出掛ける彼に、一体どこへ行っているのかと訪ねようとして言葉を飲んだ。居候という立場の自分が、彼の行動を詮索するのは図々しいと思ったから。
「ああ」
遥人の言葉に返事をしてから、立ち上がった大雅はそのまま奥の部屋へと入っていく。
その戸の向こうは彼の部屋で、入ったことはもちろん無いけれど、少しすると私服に着替えて出てくることは知っているから、遥人も慌てて椅子から立って自分の部屋へと足を進めた。
「……」
後ろ手で戸を閉めた遥人は大きく一つ息を吐く。大雅の私服は一度見たけれど、いつもとは違うその雰囲気に、自分自身にも分かるくらいに心拍数が速まった。
服装自体はシンプルで、ジーンズにシャツと薄手のジャケットという組み合わせだったのだが、制服の時と全く違った大人びたその雰囲気に、思わず遥人は動きを止めて彼の姿に魅入ってしまった。
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