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第三章

【第三章】 『じゃあハルト、俺たち今日から親友な』 『……しんゆう?』 『知らないのか? 一番の友達ってことだ』 『僕が?』 『そう、親友。ハルトのこと気に入ったから、これからは一緒にいて、ずっと俺が守ってやる』  ――守るって……俺はそんなに弱くない。 『ずっと?』 『うん、ずっと。だってハルトは淋しくて泣いてたんだろ?』  逆光で顔は見えないけれど、少年の発する言葉が直接脳へと響いてくる。  ――ああ、またあの時の……夢を見てるんだ。  あの日、小学生だった遥人が母に手を引かれ連れて行かれた広い庭園で出会ったのは、同じ年だとは思えないくらい快活で、大人びた雰囲気を持つ背の高い少年だった。  庭園の中でどんな風に遊んだのかは、正直ほとんど覚えていない。だが、時折夢を見るようになって、彼と過ごした記憶の断片が、まるでパズルのピースのように、少しずつ形になりはじめている。  当時の遥人はシングルマザーの母と二人、市営住宅に暮らしており、自分の為に頑張っている母にはとても言えなかったが寂しい気持ちを抱えていた。  そんな心を出会ったばかりの少年につい漏らしたのは、今考えれば遥人自身も彼に好意を抱いたからだ。 『ありがとう。嬉しい』  差し出された掌を握りしめ、遥人がそう言葉を返せば、照れくさそうに笑った少年は『休みの日なら俺はいつでもここにいるから、また来いよ』と告げてきた。

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