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「あっ、そこ……や、おさないで……」  しかも、遥人自身も気付かぬ内に、後孔内へと差し込まれていた指で内壁をかき回され、愉悦に従順な細い体はビクリビクリと痙攣するが、止めて欲しいと哀願しても大雅の動きは止まらなかった。  どうして彼が、こんなことをしているのかが分からない。 「……んで、どうして」  押しのけようと腕を伸ばすが、立派な体躯をしている大雅は、そんな抵抗をものともせずに悦い場所ばかりを圧してくる。 「ん…あ…やだ、やっ……も、やめてっ」  いつもと変わらず表情のない大雅の姿を目に映し、裏切られたと感じた遥人が涙を流して訴えかければ、瞳を眇めた彼は一旦動きを止め、むせび泣いている遥人の中から二本の指を引き抜いた。 「何も考えなくていい」 「う……うぅ……」  意志と裏腹に勃ってしまった遥人のペニスが、掌で緩く扱かれる。 「大丈夫だ。痛いことはしない」  目尻へ触れた長い指先が、次々溢れる涙を拭い、同時にヒクつくアナルの縁へと何かがピトリと宛がわれ、それが何かを悟った遥人は大きく瞳を見開いた。 「嫌か?」  寝ている間にここまでしたのに、尋ねる声はやけに真剣な響きを帯びて伝わってくる。  何故、彼はこんなことをするのだろう。 嫌だと言えば止めてもらえるのだろうか。  そんな疑問が頭に浮かぶが、混乱のあまり声にはならない。

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