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「お前を逃がしてやる力は、今の俺にはない」  遥人の体を綺麗に洗い、バスローブへと着替えさせてから、ベッドの上まで運んだ彼は、自分自身もベッドへと入り背後から遥人を抱きしめている。  照明は既に落とされているが、広い窓から満月の光が部屋を薄暗く照らしていた。 「うちの組も水面下では御園との取引がある。だから今、御園を敵に回すことはできない。さっきも言ったがあと4ヶ月、その前に今泉が飽きるかもしれない。だから、一時的な感情でこんなことをするのは止めろ」  真摯に響く彼の声音に目の奥の方がツンとする。 「今回のことはまだ御園にも今泉にも悟られてない。だが、もしもいなくなったとバレれば、すぐに見つけ出すだろう。そうなれば、お前への締め付けはさらに厳しくなる。そんなのはイヤだろう?」 「……どうしてなんでしょうか。俺のことは放っておいてくれればいいのに。宮本さんも、どうして、こんな……」  疑問を言葉にしながらも、先ほどまでの痴態を思い出し頬が勝手に熱くなる。  もし、馬鹿な行動を止めようとしただけだとしたら、あんなことをする理由は無いし、だからといって彼が自分に恋愛感情を抱いているとも思えなかった。なにせ、貧相ではあるけれど、どこから見ても自分は男だ。  玲にしても、大雅にしても、御園との繋がりがそこまで大事なものなのだろうか?

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