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彼からの問いかけに、『行く』と明確な返事をすることはできないけれど、それしか道は無いのだろうと内心理解はできていた。
ここまで、死のうとまで思い詰めたり、後先も考えないで家を飛び出したりしてしまったのは、衝動的な行動だったが今の遥人は少しだけ違う。
――大学……までは。
玲の姿を思い浮かべれば嫌でも憂鬱な気持ちになるが、これまで感じることのなかった生きる目的を見いだせたことで、遥人の心は久しぶりに安定を取り戻した。
なにせ、天涯孤独になった上、この3年間負の感情しか向けられたことが無かったのだから、生に対する執着心は日々薄れていくばかりだった。
『嫌なことがあっても、生きてれば必ずいいことがあるから』
ふいに、生前の母が言っていた言葉が頭に木霊する。聞いた当時は小学生で、気にも留めない日常会話の一部だったはずなのだが、今になってやけに鮮明に思い出すから不思議なものだ。
「寝たのか?」
「……いいえ、まだ……」
尋ねる声に答えた途端、急に眠気が襲ってきた。
背後から腰を抱き締める彼はどんな表情をしているのかと、振り返りたい気持ちになるが、実行できる勇気はない。
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