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「んっ……うぅっ」  椅子に座った状態のままで背後から顎を持ち上げられ……仰け反るような苦しい体勢に遥人は体を捩ろうとするが、動ける範囲は限られているから、まるで抵抗になりはしなかった。 「ウゥッ……んぅ」  おとがいを強く圧迫され、強制的に開いてしまった口腔内へと舌が入り込み、そのまま歯列をなぞっていく。  そこから奥へ進んだ舌先に、上顎あたりを舐め回されれば、くすぐったさと背筋をゾワリと抜ける愉悦に、心を無視してしまった体が悦ぶように戦慄いた。  口の中にも性感帯があるということを、何度も遥人に教え込んだのは、他でもない目前の男だ。 「ふっ……くぅ……ん」 「気持ちよかった?」  角度を変え、深さを変え……長いキスに翻弄された遥人の意識が朦朧としたころ、ようやく口を離した玲が唇を舐めて聞いてくる。 「あ……あ」 「そう。じゃあ素直になれたご褒美あげる」  問いかけに、まるで続きをせがむかのように、舌を突き出す遥人の視点は、まったく定まってはおらず、見るものが見れば何かの暗示を受けていることを見抜くだろう。  遥人の場合、キスがきっかけだ。  本人にその自覚はないが、玲と唇を合わせることで、苦しみから解放され、かわりに快楽が与えられると体が覚えてしまっていた。  しかも、遥人にとっての『快楽』とは、玲が与える全ての刺激から生まれてくる。 「どうしてほしい?」  口腔内へと差し入れられた指へと舌を絡めていると、そんな言葉をかけられたから、遥人は不自由な体を反らし、薄い胸を突きだした。 「ここ?」 「んっ……ふぅっ」  まるで“の”の字を描くように、胸元を玲の指が這う。

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