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――くるしい……息が……。
胃液の味が口腔内へとせり上がってきたその刹那、ヒッと気管が嫌な音を立て息をすることが困難になるが、追いつめられた今の状況では、何が起きたのか分からずに――。
「ぐっ……ウ゛ゥッ!」
「ああ、やりすぎちゃったみたいだ。遥人、苦しい?」
痙攣し、色を失った遥人の顔を覗き込み、さっきまでとは打って変わって優しげに響く玲の声。
「そのまま吐いちゃっていい。怒らないから」
「うっ……ぐぅ」
背中をさする大きな掌が玲のものだと分かっていても、この瞬間……自分を助けてくれる存在は彼以外にいないから、遥人は何度も嘔吐しながら「ごめんなさい」を繰り返し、それから糸が切れたみたいにプツリと意識を手放した。
***
「生きてるか?」
良く知っている声に反応して遥人は薄く瞼を開く。視界に入った人物を見て、条件反射で震え出すけれど、ここがどこで彼が誰なのかを考えることはできなかった。
「あ……とって、とってくらさい」
口を開いて助けを乞うが、呂律もうまく回らない。
今日、遥人は広いベッド上に仰向けで四肢を拘束され、数時間放置されていたのだが、時間の観念すらも上手に機能していないようだった。
「分量に注意しろと言った筈だが……」
「ちゃんと注意してる」
「……へえ、これでか?」
淡々とした口調で会話する二人の姿を目に映しても、朦朧とした遥人の頭には射精したいという考えしか浮かばない。
「……も、いきたくない、でる、だしたい」
だから、不自由な体を必死に動かし、出来るだけ腰を浮かせると……「可愛い」の声が聞こえてペニスをギュッと握られた。
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