126 / 338
42
「玲」
「分かってる。遥人、よく頑張ったね。今、解いてあげるから、可愛い顔……見せて」
「あ……れい」
悪魔のようだと思っていたのに、この瞬間……遥人の目には、彼の微笑みが慈愛に満ちた天使のように映り込み――。
「あ、あっ、ああっ!」
ペニスの根本を戒めていた拘束具が取り払われた刹那、あられもない嬌声を上げながら、二人の男の見ている前で遥人は白濁をまき散らす。そして、ようやく得られた射精感の中、意識を闇へと落としかけるが、そう簡単に逃げを打つことを許しては貰えなかった。
「ふぅ……う……ん」
「ちょっと出かけてくから、忍の言うことを聞いて待ってな」
胸の尖りをギュッと抓られ、背筋を反らせる遥人の耳へと、僅かながらの憂いを帯びた玲の声が響いてくる。
「じゃ、あとはよろしく。また大雅に渡したりしたら、今度は絶対許さない」
「ああ、分かってる」
――なにを、言ってるんだろう?
霞のかかった意識のなか、聞こえるのは訳の分からぬ二人の会話。
「いい子にしてろ」
喘ぐように呼吸をしている遥人の乾いた唇へと、ただ触れるだけのキスを落として遠ざかっていく玲の背中が、いつもとはどこか違う気がして落ち着かない気持ちになった。
「あ、あ……」
「お前……完全にマインドコントロールされてるみたいだな」
玲が出て行った扉を見つめる遥人の視線を遮りながら、堀田が声をかけてくるけれど、そうでは無いと遥人は思う。
倦怠感で思考が働かず、判断力も低下しているから、そう考えてしまうのだろうが、遥人は堀田の放つ言葉に引っ掛かりを覚えてしまった。
ともだちにシェアしよう!