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「そう震えるな。今は何もしない……というか、玲の絡みじゃなかったら、お前に興味は持たなかった」  そんな、独白のような彼の言葉も全く頭の中には入らず、ぬるま湯の中で細い体をガタガタと細かく震わせる。  視界を奪われることに対し、こうも恐怖を覚えるのは、この3日間、玲から受けた折檻のせいだった。 「仕方ないな、一ついいことを教えてやる」  そんな遥人の憐れな姿に多少の情が動いたのか、深いため息を吐いた堀田は、 「ソノ、お前のテストの結果、3位だったぞ」 と耳の近くで囁いてくる。 「……え?」  一瞬、何を言っているのか分からず頭の中が混乱したが、少ししてからようやく意味を理解して……驚きに声を上げてしまった。 「3位以内じゃないとダメなんだろう? 良かったじゃないか」  淡々とした口調でそう言うと、それ以上は何も喋らず、堀田は震えの少し収まった遥人の髪を洗いはじめる。  ――本当に? だったら……よかった。  努力はしたが、今回ばかりは難しいと思っていたから、こんな状況にも関わらず遥人は安堵の息を吐いた。  これで、大雅とした約束へと一歩近づくことが出来る。  ――もうすこし、我慢……すれば……。  希望の光が見えたからなのか、眠ることさえ制限され、苛まれていた遥人の体は、強い眠気に襲われて……。 「眠ったみたいだな」  どこか遠くから堀田の声が聞こえたような気がしたが、耳を傾けることも出来ないまま夢の世界へと誘われた。

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