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「酷いな」
「どうする? また連れて帰るか?」
「……いや、それじゃあ同じ事の繰り返しだ」
――誰?
少し離れた場所から聞こえる会話に耳を傾けながら、徐々に意識は戻ってくるけれど、体が全く言うことを聞かない。
「だな。俺も、今お前にコイツを渡したら、玲に殺されそうだし、今日のところは……」
――なにを……言って……。
懸命に瞼を開こうとするが、覚醒しようと思えば思うほど、まるで足首を引っ張るみたいに睡魔が遥人の邪魔をした。
「じゃあ、俺はそろそろ行く」
――この……声……は。
ふわりと頬を撫でる指先にはありすぎるくらい覚えがある。
――目、開けないと……行ってしまう。
離れてしまう気配を感じ、遥人は必死に起きあがろうと足掻くけれど――。
「目、醒めたか?」
「あっ……」
結局、目覚めた時に側にいたのは堀田ただ一人だけだった。大雅の声が聞こえたような気がしたのは、遥人にとって都合の良すぎる夢か幻だったのだろうか?
「尻、かなり痛いんじゃないか? とりあえず薬は塗っておいたが、仰向けにはならないほうがいい」
「え? あ……はい」
これまでとは全く違う、学校にいる時のような穏やかな彼の物腰に、遥人は内心戸惑いながらもうつ伏せのまま頷いた。
確かに、言われてみれば臀部辺りがヒリヒリ焼け付くように痛む。
テストが終わって数日間、玲から受けた仕打ちを思いだし、遥人が小さく身震いすれば、堀田が大きなため息を吐いた。
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