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 それから遥人は三日間、堀田と一緒に過ごしたけれど、恐れていた酷い仕打ちを受けるようなこともなく、嘘みたいに穏やかな時を過ごすことができたのだが――。 「本気で玲から逃げ出したいと思ってるなら、一人じゃ無理だ。だが、お前の兄なら……もしかしたら、助けてくれるかもしれない。会ったことは無いのか?」  三日目の夜、堀田に言われて遥人は眉根を僅かに寄せる。  自分に兄が存在するのは知っていた。  同じ高校の卒業生で、彼の名前を知らない生徒はいないくらいに有名だが、助け船ともとれる発言を堀田がする意味が分からない。 「会ったことも無いですし、助けてもらおうとか、そういうのは思わない」 「へえ、意外……でもないか。ソノは見た目ナヨナヨしてるけど、人に助けを求めないから」  セックスの時は別だけど……と、からかうように続いた言葉に、遥人が俯き顔を背ければ、「冗談だよ」向かい側にあるカウチソファーから優雅な動作で立ち上がり、こちら側へと歩み寄りながら喉を鳴らして堀田は笑った。  兄の名前は御園唯人。  卒業からは既に9年が経過しているにも関わらず、彼の名前は今なお時折学校内で耳にした。  なにせ、遥人の通う学校は、御園が経営を手がけている。  唯人は御園の後継者だから知らない生徒がいないというのは理解の出来る話だが、今現在の彼の活躍も語り継がれる理由の一つとなっていた。

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