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「あ……やめて、やめてくださいっ」
唇が触れた次の瞬間、鈍い痛みがそこから生まれた。
遥人にはまるで興味がないと言っていた筈の彼なのに、何故こんなことをしてくるのかが分からず遥人は混乱するが、「動くな」と、低く言われれば、彼の怖さを知っている身体は竦んで身動ぎできなくなる。
「止めろなんて口で言っても、抵抗すらまともに出来ない。これがマインドコントロールって言うんじゃじゃないのか?」
喉を鳴らしてあざ笑う声に、悔しい気持ちがこみ上げるけれど、それを言葉にすることも出来ずギュッと掌を握りこんだ。
彼の言うとおりだ。
心ではいくら嫌悪していても、胸元を這う掌に……身体の深い場所からムクリと淫らな熱がわき上がる。
「んっ……う」
同時に強い吐き気を催し、遥人が小さくえずいたところで、停滞していた部屋の空気が僅かな流れを持ったのだが、自分の事で精一杯でそんなことには気づけなかった。
だから、突然離れた堀田に代わり逆さに視界へ入ってきたのが見慣れた顔だと認識しても、すぐには思考が働かない。
「ただいま。遥人」
「あ……んぅっ」
柔らかく、透明感のある声が、「何をしてるの?」と、尋ねてくるけれど、すぐに唇を塞がれたから、答えることは出来なかった。
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