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――どうして?
混乱している遥人をよそに、素肌へと触れた彼の指先が胸の辺りを撫で擦り、もう片方の掌が、遥人の頭上に備え付けてあるスタンドライトのスイッチを押す。
「っ!」
すると、淡いオレンジの灯りの中、遥人の腰を跨ぐ格好で見下ろしてくる大雅の姿が視界の中へと浮かび上がり、思いも寄らないことの連続に思わず息を飲みこんだ。
「相変わらず、ここは隠れてるんだな」
「や、やめてください」
制止を求めて声を上げるが、大雅はまるで聞こえないみたいに、先端部分が陥没している乳輪を緩く揉み始める。
隠そうとして動した手をパシリと払い退けられて、「動くなと言った筈だが」と、淡々とした口調で言われれば、震えながらも磔られたみたいに体は硬直した。
「うぅっ」
痛みを感じる訳ではないが、思考が全くついてこない。不安は増す一方だが、彼の意図を尋ねようにも、既に歯の根が噛み合わぬはど震えは大きくなっていた。
遥人を見下ろす彼の目からは、何の感情も読みとれない。緊張して、感じ取ることができないせいかもしれないが、元より大雅が感情を外へ出した場面を見たことが無いから、遥人などが想像しても答えがわかるはずはなかった。
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