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――怖い。けど……。
大雅は遥人に今現在の平和な生活を与えてくれた。
それなのに、隠し事なんかしている自分に腹を立てているのかもしれない。
「ん……んぅ」
混迷を極める思考の中で、ようやくたどり着いた憶測は、自分自身を納得させる為にはかなりの効果があった。
だけど……謝罪しようと開いた唇は、言葉を紡ぐことができない。なぜなら、ハンカチのような布を取り出し、それに結び目を作った大雅が、遥人の口を無理矢理こじ開け、それを中へ押し込んできたから。
「ぐ、うぅっ!」
頭の後ろへ回したそれを取れないようにきつく縛ると、大雅は表情一つ変えぬまま遥人のシーツを破り始め、それを使って遥人の手首をひとまとめにして縛り上げた。
それから、余った布地をアンティーク調のベッドの鉄枠へと通し、少しの余裕を持たせて首へと巻き付けてから堅結びをする。
「悪いな。舌を噛まれたり暴れられると困るんだ」
ここまでのことをしておいて、淡々とした声音で告げてくる大雅の気持ちは読みとれず、声も封じられているから尋ねることも出来やしなかった。
それでも、これは何かの間違いなのだと、心の中で何度も繰り返し反芻していた遥人だが――。
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