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「本当は、ソノを誰にも渡すなって、玲から言われたんだけど……聞いてやる義理はもう無いから」
聞こえてくるのは、淡々とした男の声。
彼、堀田忍は玲の友人だったはずなのに……大雅とどんな繋がりがあって、再び姿を現したのか。
「ん……んっ」
「ここ、好きだよな」
下肢を撫でさする大雅の動きに呼応するよう、胸へ這わされた掌を、咄嗟に払い退けようとして手を動かした遥人だが……同時に首が絞まってしまい、大きく咳き込む羽目となった。
***
遡ること数時間前――。
『時間が無いから、結論から言わせてもらいます。できるだけ早く宮本大雅から離れたほうがいい。住む場所は君のお兄さんが用意するし、危険なようなら護衛もつけるから』
カフェへと入り、注文をしたアイスコーヒーが置かれたところで、兄の友人という白鳥は、声を潜めて告げてきた。
しかし、一度も会ったことのない兄の友人だなんて言われても……正直言って怪しい以外、感想なんて抱けない。
『高校へは三年生まで普通に通えてたって聞いてます。ただ、最後の半年は……辛い思いをさせてしまったね。お祖父さんからの圧力もあって、会いに行けなかったこと、情報収集がうまくいかなくて、動くのが遅くなってしまったことを、お兄さんは直接謝りたいって言ってる』
"ならば、何故本人が来ないのか?"
と、尋ねたくもなったけど、そんな考えを読んだみたいに、兄は色々と目立ち過ぎるから、遥人を気遣いこんな形になったのだと説明された。
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