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『実は……彼は数年前、政財界にも利用者の多い料亭、"宮本"の養子に入っている。だけど、元の姓は佐伯といって、関西に本拠地を置く指定暴力団、角田会系佐伯組の若頭の息子だ』   『そう……ですか』  続く白鳥の話を聞く内、少なくとも大雅は自分に嘘をついていた訳ではないと分かったから……遥人は小さく息を吐き出し、目の前にあるアイスコーヒーを口にした。 『あまり驚かないんだね』 『本人が、ヤクザの子供だって言ってたので』 『そうか……じゃあ、騙されている訳じゃないんだね。宮本君が本当に君のためを思って、ルームシェアをしているなら、例え彼の出自がどうであれ、俺たちが介入すべきじゃないんだろうけど……ただ、彼の父親、佐伯聡一は……』  そこで一旦言葉を止め、言いづらそうに俯いた彼だが、時折声を詰まらせながらも、佐伯に関する話を続ける。そしてその内容は、聞いているこちらも辛くなるような酷いものだった。  もちろん、彼の話を鵜呑みにするつもりは無い。だが、初対面の自分に対し、そんな話までしてくるのだから、かなり真剣に心配をしてくれているのは伝わった。  大雅と大雅の父親は別の人間だから、そんな話で疑うような真似をするのは間違えている。ただ、白鳥からの衝撃的な話を受け、正直混乱していたし、最終的には大雅のことを信じようと決意していても、自分を納得させるためには一人になって考える時間が欲しかった。 『大学に入ったばかりだし、すぐに何かが起こる可能性は低いと思う。今日は突然でびっくりさせただろうから、また近い内、今度はどこか別の場所で、お兄さんに会う時間を作りたいと思ってる。それまでは、何が起こるか分からないから、このことは内緒にして欲しい』

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