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 全く気配を感じなかった遥人が身体を震わせると、「目を開けろ」と言われてしまい、仕方なく瞼を開いていくと、思ったよりも近い距離に彼の端正な顔があった。 「っ!」  驚いた遥人は声にならない悲鳴を上げ、逃げようとして体を捩るが、「動くな」と告げられただけで、意志と裏腹に身体のほうがピタリと動きを止めてしまう。 「その方が利口だ。無駄に足掻いても痛い目にあうだけだもんな」  頬を撫でてくる大きな掌。逃げ出したくてたまらないのに、恐怖に竦んで動けなかった。 「大雅は大学だ。俺は今日休みだから、ここに残ってソノが起きるのを待ってた」  どうして堀田がここで待っている必要があるか分からないけれど、それを問うこともできないから、遥人は小さく頷きかえす。  どうにも……今の彼が纏う雰囲気はいつもと違うような気がした。 「べつに見張ってるわけじゃないから、逃げたければ逃げろ。お兄さんの友達の連絡先聞いたんだろ?俺も大雅も止めはしない。それが一番安全だ」 「ど…して……」    あそこまで酷いことをしておいて、他人事みたいに逃げろと言う彼の心情が分からない。だから、勇気をだして口を開いた遥人はそれを聞こうとするが、昨晩散々喘いだせいで声は掠れてしまっていた。

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