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「それは何に対しての疑問?  昨日の夜のことなら、理由を知って、それが納得できる理由なら、あんなことをされてもソノは許せるのか?」  皮肉めいた笑みを浮かべて堀田が頬へと触れてくる。それは詭弁だと言い返したいが、本能的な恐怖に駆られて声は喉の奥で消えた。  許すとか、許さないとか、そういった秤ではなく、遥人はただ、大雅が豹変した理由を知りたいのだ。 「ソノ、お前が選べる道は、ここから逃げてお兄さんに泣きつくか、大雅が帰るのをここで待つかだ。でもまあ、逃げたほうがいいだろうな。俺に言えるのはそれだけ。一応身体は綺麗にしておいたから、早く動いた方がいい」  一方的にそれだけを告げると、「動いていいよ」と付け加えてから堀田は部屋を出ていった。  残された遥人はしばらくの間、天井をぼんやり見つめていたけれど、とにかく起きなければと考えてベッドの上へと起き上がり、痛む体を叱咤しながら床に足をつけ立ち上がる。

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