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「……くぅっ」
視線を落として手首を見ると、縛られた痕がくっきりと残されていた。重い身体を引きずるように、クローゼットの横へと置かれた姿見をのぞき込んでみれば、首にも同じ痕がある。
――どうして?
昨日の全てが現実だったと確信しても、まだ遥人は夢だったのだと思い込みたくて仕方なかった。
大雅は……口数こそ少なかったが、高校生のころから何度も遥人のことを助けてくれた。
大変だった受験勉強も、大雅との約束があったから頑張れた。
――全部、嘘だった?
彼の思惑が分からない。堀田との繋がりもま――。
――どうしたらいい?
いつもの倍の時間をかけ、洋服へと着替えているあいだ中、遥人は懸命に考えるけれど答えが全く浮かばない。
ふいに、机上に置かれたスマートフォンが視界へと入り、同時に昨日初めて会った白鳥の顔が思い浮かぶが、遥人はそれを拒絶するように首を大きく左右に振った。
――ダメだ。
逃げてばかりじゃいけないと、遥人は結論を導きだす。
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