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 ***   「おはよう」  夢も見ないほど深い眠りから醒めた遥人が瞼を開くと、見覚えのある綺麗な顔が、至近距離からこちらを見ていた。   「……っ!」  目を見開いて息を詰める。驚きのあまり声も出ない。  意識を絶ってしまう直前、彼の声が聞こえたような記憶は微かにあるものの、現実だとは思わなかったし、現実と思いたくもなかった。  だから、突如現れた彼の腕から逃げ出したいと思ったのも、それを行動へと移したのも、無意識のうちの行動で――。 「どうしたの? トイレ行きたくなっちゃった?」  闇雲に爪でシーツを引っかき、ベッドの端へと這おうとするが、彼に背中を向けた途端、長い腕が腹の辺りを強い力で抱き締めてくる。 「やっ……あぅっ」 「急に動いちゃダメだ。弱ってるんだから」  この時……直に肌へと触れた掌に、ようやく遥人は自分が裸であると気がついた。 「……服、返してください」  勇気を出して言葉を紡ぐと、喉が酷い痛みを覚える。しかも、まるで風邪でも引いたみたいに、かなり掠れてしまっていた。 「ここ、痕になってる。気管が腫れてるみたいだから、安静にしてたほうがいい」  喉仏からうなじの辺りを指でゆっくりとなぞられて、耳元へ低く囁かれれば、昨日大雅から受けた仕打ちが嫌でも脳裏に蘇ってくる。

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